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これは企業トップに読んでほしい「ワークライフバランス社会へ」 [仕事に悩み考えているときに]


「ワークライフバランス社会へ 個人が主役の働き方」 大沢真知子 岩波書店2006年

読後の率直な感想は、
「これは労働者よりも企業トップや人事のトップが読まねば意味がない」
というところだろう。

著者は日本女子大の教授である。
日本国内だけでなく、世界のレベルと比べるなど、グローバルな視点からも
日本社会の労働問題をここでとりあげている。

なぜ、他国と比べるのか。
それは、日本国内にはまだ理想のモデルがないからだ。

著者はこう述べている。
「日本の働き方のなかには、家庭生活も大切にでき、
雇用の安定もあり報酬もそれなりという仕事が、スッポリ抜け落ちていることになる。
この・・(略)・・働き方こそが、わたしたちが望んでいる働き方ではないか」

まさにそのとおりなのだ。
働く側が企業や組織にあわせるしかないから、フリーターが何故か国家問題になる。
パートで扶養される範囲でしか働けないから、安い賃金で正社員と同じ仕事で我慢する。

この著書は、その矛盾をスッパリと論理的に切り出し、断面をわかりやすく書いているので、
本当にこんな働き方ができればどんなにいいだろう、と思う。

しかし、現実に労働者は弱い。

我慢そして我慢。
そして体や心を壊して初めて気が付く。
もっと大切なことがあったことを。
でも、そうなってからでは遅いのだ。

壊れた人の後は違うパーツのように誰か他の人で手当てされることもあれば、
その穴を努力で埋めろといわれ、また我慢する人が出てくる。
悪循環だ。

こういった正論を実行に移していくためにはどうしたらいいのだろう?

トップがこういったものを読んで、考えを改め、
トップダウンしてくれるまでまたねばならないのだろうか?

今、ホワイトカラー・エグゼンプションなる
さらに労働時間の枠の守りをはずそうという動きが出ている。

もちろん、企業の経営者たちの団体のいうことに追随した
厚労省が選んだ経営者や学者が大方を占める会議メンバーなら、
一部労働者側が入っていても結果としては反対するものを現実的にだせるわけがない。
そして、実際そうなってしまった。
次回国会提出は時勢の関係で見送られたものの、決してこの自分達に有利な流れを
経済界トップが忘れることはありえないだろう。

やはり、自分の身は自分で守るしかないのだろう。
会社や組織につぶされず、自分らしい生き方をしていくことは本当に困難な現代である。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。

ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方

ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方

  • 作者: 大沢 真知子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本


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辛さの後に見えるもの 「神様からひと言」 荻原浩 [仕事に悩み考えているときに]


「神様からひと言」 荻原浩著 光文社 2002年初版

「あの日にドライブ」
(2005年初版光文社http://blog.so-net.ne.jp/bookcafe-niraikanai/2006-04-21
でも思ったのだが、荻原氏の作品は
読み始めがどうも辛い。

きっと、これは皆同じように感じるかもしれないのだが、特にサラリーマン生活をしたことの
ある人なら、誰でもきっと感じることなのではないか、とふと思う。

今回も、泣く子もだまる大手広告会社を訳あって辞め、中堅食品メーカーに就職した主人公は
当初さんたんたる目にあう。
上司のやっかみ、組織の力関係、そして掃き溜め部署への異動。

その掃き溜め部署とは「お客様相談係」、つまり苦情処理係のようなところなのだが、
ここでもまたとんでもない上司がいて、くせのあるメンバーがそろった課のイメージも悪い。
当然のことながら。

きっと、読者の中にも苦情処理を担当したことのある方がいるかもしれない。
これは辛い仕事だ。本当にこちらのミスでなくてもとにかくあやまる。
あとは当面の問題とは関係のないことでもまず話は聞かねばならない。
そうかと思えば、場合によっては押したり引いたり、あるいははっきりと筋を通して
強気に出なければならないときもある。
自分のミスでないが、会社組織のミスを頭をこすり付けて謝らねばならないときもある。

そんなとき、当の関係部署は「あっちがわるいんだから」とどこふく風の時さえあるのだ。

この作品では、主人公は会社人生と、自分のプライベートでも情けない状況にありながら、
回りの人たちに感化され、あるいは思わぬ人に助けられながら、修羅場やら情けない日々を
送った末に自分の新たな道を見つけ出していく。
そんな「あるスタート」までの物語なのだ。

本当に辛い状況にありながら、時には仕事でもバクチを打ち、
思わず笑ってしまうようなシーンもある。
この笑いがこの作品の重さを実は支えている。

この作品で学ぶことは多い。
人を見かけで判断しない、人の話はあっと思ったらよく耳を傾けてみる、
くよくよしてもしかたないことはどこかで解消する、
そして、本当に大切な一握りのものは決して手から離さないこと。

人生は、多くのことをねだらなければ、案外シンプルなのだとわかってくる。

転職を考えている人、今転職活動中の人はもちろん、仕事に悩んでいる人、
苦しんでいる人にもぜひ読んでいただきたい。

このようにはうまくいかないかもしれない。でも、きっと何かヒントは見つかるはずだ。

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神様からひと言

神様からひと言

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/03/10
  • メディア: 文庫


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管理職の方にぜひ読んでほしい 「こんな上司が部下をおいつめる」 [仕事に悩み考えているときに]


「こんな上司が部下をおいつめる 産業医のファイルから」
荒井千暁著 2006年4月初版 文藝春秋

タイトルを見て、すぐ読む気になった。
きっと、同じ気持ちの人は多いと思う。

ただ、正直事例としては若い人向けの傾向があるので、中間管理職、あるいは係長級の方は
一部を自分のために、残りを自分を振り返るために読むつもりで手にしたほうが
良いかもしれない。

著者は産業医学、呼吸器病学、アレルギー学の専門で、
ある大手製造業企業の統括産業医をされている。
そういう意味ではかなり最近のリアルな状況が事例として取り上げられている。

「働いて病気にならないためにはどうしたらよいか」
これがこの本の目指すところである。

本当に、今の時代に働いて平気で居られる状況は少なくなった。
もし、周りに楽しく働いている人がいたとしても、そのすぐ隣で病んでいる人がいて、
それはある日その人が急に休むまで、あるいは倒れるまで、最悪の場合、
亡くなるまで誰も気がつかなかったりする。

気がついている人も、どうしようもない場合もあるだろう。
気がついている人自身も必死だからだ。

組織で働くということはどういうことなのか。
現状では、かなり人間にとってリスクを伴うことだ。よほど上手く泳いでいける
ほんの一握りの人意外は、皆そう感じているのではないか。

この本でも述べられているように、職場の状況のキーを握るのは管理職だ。
しかし、その管理職まで病んでいる現状で、あとは同僚同士、あるいは他部所であっても、
同期や仲間などで互いに気遣っていかねばなるまい。

「こいつあぶないな」と思ったら「何かあったのか?」と話を聞くだけでもいい。
手に余ったら会社と契約している、あるいは近くの専門家(カウンセラーや産業医、精神科医)に
いくことを勧めるしかない。

あるいは、自分自身が「もうだめかもしれない」と思ったら、最悪の状況に陥る前に、
信頼できる仲間、あるいは最初から専門家に相談することだ、とつくづくこの本を読んで思った。
それは自分も同感するところであり、皆さんにも勧めたい。

自分、そしてとりまく環境(家族や将来)を守るのは、自分自身なのである。

この本を読んでもピンとこなかった管理職の方は、よくよく考えていただきたい。
きっと「私の部下にはこんなやわなやつはいない」「現状では厳しい状況はしかたがない」と
思われるかもしれない。
しかし、仕事のマネージメントとともに、人的マネージメントも管理職の大切な仕事である。

組織=会社は、その管理職をサポートすべきと思うし、そうした心理面でのバックアップも
風通しの良い機能性の高い組織こそが、今後も本当の意味で成長していくのだと思う。

いくらでも、代わりの人間はいる。
組織がそう思っているなら、それまでだ。
こちらもそれなりの心構えで自分を守る手立てを考え、したたかに生きていかねばなるまい。
自分にとって自分の体と精神はこの世にたった一つだけのかけがえのないものなのだから。

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こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから

こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから

  • 作者: 荒井 千暁
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本


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女性二人集まれば・・・「対岸の彼女」 角田光代 [仕事に悩み考えているときに]


「対岸の彼女」  角田光代 2004年11月初版 文藝春秋

角田氏の作品は「東京ゲストハウス」以来である。
この作家は、多くの人を登場させるのが好きなんだな、と思った。
その多くの登場人物を描くことで、主人公格の二人の女性を浮き上がらせる。
そういう手法は「東京・・・」でも見られたが、この作品のほうがより主人公といえる二人の女性を
しっかり描いていることで好感は持てる。

主人公は二人。

一人で旅行会社を興し、一見自由そうに生きているが思ったように従業員を使えず、
仕事も本業がうまくいっていない30代の女性。
そして、小さな子供が一人いる専業主婦で、仕事をしようとその会社のドアをたたいた
同年齢の女性。
二人はたまたま同じ大学に在学していたこともあり、主婦は夫や義母からイヤミを言われながらも
新しい世界へと足を踏み出すのだが・・・。

読後に思ったこと。
「対岸」とは何か。
対岸、といいながら、実は同じ側にいることを示唆しているのか。
それとも、あくまでも「対岸」なのか。
「対岸」にありながら、まっすぐ向き合っていることをいうのか。
それとも単に全く違う立場の二人のことを示しているだけなのか。

そこをもう少し突っ込んで欲しかった気もするし、主人公の元専業主婦が最後に取る道、
家庭との関係が最後で少し安易に変化していることはやや気になる。

しかし、女性同士を描いたら、なかなかここまで描ける人もそう多くはないだろう。
そういう意味で、中年に差しかかった女性たちの本音を垣間見たい人にはお薦めである。
それに嫌悪感を抱くか、共感を持つか、まったくなんのことかわからないか。
読後感は人それぞれだと思う。

しかし、人は自分の過去を自らにぺったりと貼り付けながら、生きていくしかない。
ただ、それをどう見せるのか、隠すのか、変容させるのかはその人の生き方次第なんだろうと
これを読んで思った。

お子さんがいて、これから仕事を再開しようかと思っている方、
また、仕事をしながら女同士のごたごたで嫌気がさしているかた、
起業をしようと思っている方、そして、人には言いたくない過去を持っている方。
(みんなそうかもしれませんね)

読んでみることで何かが開けることもあるかも・・・しれない。
わりと短時間で読むことができます。
別冊文藝春秋に掲載していたイメージはやや強いですが、それほどアクも強くない。

ちなみに、表紙の色が微妙な色合いで、これは気に入っている。

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対岸の彼女

対岸の彼女

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/11/09
  • メディア: 単行本


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40代に読んでほしい「あの日にドライブ」荻原浩 [仕事に悩み考えているときに]


「あの日にドライブ」 荻原 浩 2005年初版 光文社

初めてこの著者の作品を読んだ。
最初、リストラされた銀行員がタクシードライバーとして生活をしのぐ、というさわりから、
「ちょっと重いかな・・・」とも思った。

確かに、冒頭のあたりはその暗さが重く気持ちにのしかかる。
それは、おそらく主人公の気持ちそのものでもあるのだろう。

しかし、読み進めるにつれ、その主人公の周りの人々の人生、
主人公が昔勤めていた銀行や学生時代のこと、昔の恋人のことなど、
彼の心情や過去をないまぜにしながら、いつのまにか読んでいる自分の人生にひきつけて
読んでいることに気がつく。

そこがもしかすると、この作家の良い意味で「上手い」ところなのかもしれない。

そうして主人公の心情に自分を重ねていくと、いつのまにか暗いことも笑いとばし、
彼のと同じ視線で、その場面に立ち会っている自分に気がつく。

43歳にして、大銀行というある意味で日本の経済社会を象徴する勤め先を
ある理由で辞めた男が、時に腐りながらも、家族の信頼を失ったと思い込みながらも、
昔の夢を思い出して「たら、れば」を繰り返しながらもどう生き続けていくのか。

今の40代は、組織にあっては、いわゆる団塊の世代の下で
ある意味でずっとその力を押さえつけられてきた世代であり、
またある意味ではその責任をあるときには回避することができた世代であり、
今後の団塊世代の大量退職後には、急にまわりを見回すと自分が責任の重い立場に立たされ、
若い新しい考え方の部下をまとめていかねばならない立場に立つことになる。

これは、組織に属する40代にとっては、大きな問題に既になりつつあるのだ。
このことを考えると、この主人公はもちろん納得してやめたわけではないにしても、
組織にそのまま残ったところで幸せだったどうかは誰にもわからない。

途中、主人公がずっと気になっていた妻の悪い癖を指摘するあたり、
あるいは子供達との関係など、噴出しそうになる笑いもある。
これだけ苦しい中で、やはり最後は周りの人間とのコミュニケーションなんだな、とつくづく思う。

終わり方には、ちょっと甘いかな?との思いはあるが、救われる心境にたどり着く。
ちょい甘であっても、リアルな苦しさの後には、帳尻を合わせるように残る「何か」があってもいい。

その点で、この作家と私の気持ちはどこか通じるものがあるような気がしたのだ。

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あの日にドライブ

あの日にドライブ

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/10/20
  • メディア: 単行本


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ジャーナリズムの真髄を見る「黒田清 記者魂は死なず」 [仕事に悩み考えているときに]


「黒田清 記者魂は死なず」有須和也 河出書房新社 2005年初版

私が黒田清氏と出会ったのは・・・と行っても一方的な私からの出会いだが、
テレビ朝日の朝の番組、やじうまワイドのコメンテーターの黒田さんと、であった。

大阪弁で、ぽつりぽつりと話すその言葉は、いつも時間がもっとあったら、その先が、
もっと大切なことが聞けるであろうに、というところで切り替えられてしまうのだった。

その黒田氏が、テレビを見ていても明らかに痩せていく。
これはきっと思い病なのだろう、と心配している中、2000年7月、天に召されていった。

この本を読むまで、私は黒田さんの経歴をほとんど知らなかった。
どこかの新聞社の記者であったことは知っていたが、それ以上は知らなかった。

黒田氏が、大阪の読売支社・・・というよりも、大阪読売ともいうべき新聞社で
どんな記事を、活動をしていたかが、この作品には克明に描かれている。

地を這う現場取材、人の気持ちに寄り添う、一人を大切にする、
読者=市井の一人を大切にする・・・。
その姿は多くの名文、名連載を生み、慕う者も多かったが、
かならず目立つものには足を引っ張るものが現れる。

そうして、黒田氏は、定年を前に読売を去ることとなる。

腹心の同士、大谷昭宏氏とともに、退職後も個人事務所でミニコミ紙作成等
ジャーナリスト活動を展開する。
それも、読売時代に始めた「窓」という紙面と読者をつなぐコラムを責任をもって引き継ぐ
という思いが中核となっている。

黒田氏のことばで、タテ社会でもヨコ社会でもない、マル社会があったらいい、
ということばがでてくる。
誰もが、どんな立場でも、どこに住んでいても、中心に同じ距離であるということ。

これが、彼の目指したものであり、これをジャーナリズムで実現しようと
人生を投げ打ってトライし続けていたことなのだ。

確かに、強い個性を持ち、確固とした考えをもつ人には、味方ができれば本当に最後まで
ついていくかもしれないが、敵も多かった。

新聞社で閑職に追いやられ、「黒田軍団」とまで言われた社会部長時代の組織を
新しい東京の体制によりばらばらにされたときには、本当に喪失感があったことと思う。

しかし、きっと黒田氏にとっては、それらの辛い体験は過去の傷として残りつつも、
晩年には未来をみつめ、現在をみつめ、さらにマル社会に近づくためにはどうしたらいいのか
ということを、身近な人々、そしてミニコミ紙で繋がっている一人ひとりと共に考えていたのだと思う。

さらに、この本では読売新聞という新聞社組織と黒田清という一人のジャーナリストを通して、
戦後から平成に入る頃までの日本のジャーナリズムの変遷を同時に描いている。
それは生きた時代の動きでもあり、さらに、ジャーナリズムと実社会の格差を埋めようとした、
心あるジャーナリスト、記者たちの思いも込められているのだ。

他社の記者からも、一目おかれ、または尊敬のまなざしを受けたジャーナリスト。
黒田清だからこそ、本は朝日新聞の新刊紹介欄に載ったのだと思う。

テレビでの、もっと言いたいのに、時間がないというあの黒田氏の余韻・・・。
生きていらっしゃるうちに、どこかの飲み屋のカウンターで、
その続きをこれでもか、というまで聞いてみたかった、と思うのは私だけではないはずだ。

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黒田清 記者魂は死なず

黒田清 記者魂は死なず

  • 作者: 有須 和也
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2005/12/16
  • メディア: 単行本


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課長って何なんだろう? 「ニッポンの課長」重松清 [仕事に悩み考えているときに]


「ニッポンの課長」 重松清 2004年1月初版 日経BP社

この本、まず表紙が面白い。
タイトルをもじって、重松さんの名詞のデザインになっている。多分、本当の名詞サイズ。
ブックデザイナーのお二人、まず拍手。
この本は「日経ビジネスアソシエ」に2003年頃連載されていたもので、刊行にあたって
各課長の後日談が追記されている。
約2年のブランクがあるので、今その会社がどうなっているか、また、社会が当時と
どう変わっているかを比べても興味深い。この2年で案外日本が変わったことがよくわかる。

で、中身なのだが、大きく5つの柱に分かれている。
1 会社を立て直した課長
2 ヒットを飛ばしたイケイケ課長
3 社会、将来を見据えた社会派課長
4 別のことで有名人でありながら、全く違う分野でがんばっている課長
5 地方自治体で「ムラおこし」に励む課長

まず、冒頭の項目で、雪印乳業のお客様センター課長の話は泣けた。
同様の仕事を少しでもしたことのある人なら、きっと同じ気持ちにならずにいられないだろう。
会社という組織の厳しさは、うまく歯車が回っているときはいいのだが、何か起こったときに
その責が思わぬところに思わぬ重さで降りかかってくる、という点だ。
それまでは商品の問い合わせを受けていた部門が、いきなり矢面に立たされる。
社中はガタガタで情報が入ってこない。
中には、個人的な憂さ晴らしとしか思えない、言葉にできないようなひどい電話もある。
こうした状況でも、誰かがそれを引き受けていかなければならない。それが組織である。
そして、その担当を仕切る課長の重責。部下を支える立場として、自分が泣くわけにはいかない。
その厳しさを思い知る。

また、サントリーの「DAKARA」をヒットさせたのは、ラグビーファンなら誰でも知っている
本城和彦課長である。これにも驚いた。よくラグビー指導とのバランスをとっているなあと感心した。
きっと、うまくチームプレイが仕切れているのだろうと読んでいてわかる。

最後に、地方自治体(県、市町村など)の名物課長も取り上げられている。
中には南高梅(美味しいですね)のブランドを確立すべく、「うめ課長」として奮闘する人もいれば、
キャビアの国産化に向けて「チョウザメ課長」として新日鉄釜石から出向している人もいる。
その中で、沖縄県でITを担当している課長は、観光だけに頼らず沖縄人が地元で働く場を
作り出すためにもコールセンターの誘致に努力していた。
それは、今、現実のものとなり、多くの大企業のコールセンターが沖縄本島に移設され、
コールセンターのメッカとなっている。

こうして様々な課長さんの活躍を読んでみると、やはり、組織で中間管理職が生き生きと
動けることが、健康な組織の条件の一つだと思う。
中間管理職が次々辞めていったり、優秀な人から早期退職に手を上げたりして、どよ~んとした
よどんだ空気が立ち込めている組織は、近いうちに沈没するかもしれない。

それを食い止めようといくら若手ががんばっても、要は中間管理職がどれだけ若手をまとめ、
腹をくくって幹部に切り込んでいくかが肝心なのだ。
そこに組織、そして日本の本当の再生はかかっていると思うのだが・・・。
言うは安く、行うは難し。今、一番辛いのも「真面目な」課長さんなのかもしれない。

重松さんは、冒頭で、「苦労話よりも夢のほうに重点をおいて話してもらった」と述べている。
そのことと、重松さんのわかりやすい文体のおかげでテーマのわりにはかなり読み進めやすい。

組織に所属している方はその立場、立場で読んで、決して損はない一冊である。

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ニッポンの課長

ニッポンの課長

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2004/01/26
  • メディア: 単行本


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秘書はハードボイルド「立花隆秘書日記」佐々木千賀子 [仕事に悩み考えているときに]


「立花隆秘書日記」 佐々木千賀子著
2003年3月初版 ポプラ社

実は私は、あるとき急に秘書という業務につかなければならなくなった。
「秘書っていったい何をするんだ?」という戸惑いの真っ最中に出会ったのがこの本だ。

結果として、この本に書かれている「秘書の真髄」のようなものがわかる前に、
違う職に異動してしまった。どう考えても向いていなかった。
それでも、時間をおいて今読み返すと「ああ、あれはそういうことだったのか」ということも多い。

秘書とは、上司の仕事のサポートはもちろん、時には先回りして「多分あの人ならこうするだろう」
とか、「この資料がほしいというだろう」と常に頭を回転させておき、もしそれが空振りしても
決して落ち込んではいられない。
そんなことで落ち込んでも誰も慰めてなんてくれない。
また、大抵の忙しい上司は人に会いたがらない。
それでも、秘書が「この人には会っておくべきだ」と日ごろの上司の思考回路から、
あるいは自分で(!)判断し、面会客と画策してセッティングしてしまい、結果オーライとなること
もあれば、こっぴどく叱られて、面会客に迷惑をかけ頭を下げることもある。
それでも誰も可愛そうにとは思ってくれない。秘書とはそんな仕事であった。

そして、それらのことがこの本にも「良い面から」描かれている。

この本をまずお薦めするのは、今秘書をされていて、やや悩んでいる方や、これから秘書をやれ、
と命じられて困っている方だ。ただ、仕事に実際役立つまで消化するには少し時間が
かかるかもしれない。あまり即効性はないが、きっと後日のあなたのためにはなる。
また、やや変わり者である上司のアシスタントをされ、きりきり舞いしている方へも薦めたい。

次には、編集者として気難しい作家の方を担当しなければならなくなった方。
その作家氏なりの対応がすでに先輩から伝授されているとは思うが、
一例として役に立つに違いない。

さらには立花氏という知の巨人といわれる作家がどんな日々、仕事の仕方をするのかとか、
その交友関係、著者が在任していたときに起こった事件にどのように対応したのか、
ということを知りたい方にも十分楽しめるだろう。
その事件の中には、田中角栄氏の死去、サリン事件、武満徹氏の死去なども含まれる。
立花氏の仕事の仕方、姿勢、資料の山の様子などもこのようにリアルに知ることは
秘書という近い他人からみたからこそわかりやすいとも言える。
どのようにしてジブリアニメ「耳をすませば」に立花氏が声優として参加することになったか
などの経緯も書かれていて興味深い。

著者はそれ以前、小松左京氏の秘書を経験しているが、40歳を超えて解雇され、
立花氏の秘書の職を500人の応募を切り抜けて得た人である。
しかし、5年後、やはり立花氏からある日解雇され、ジブリ関係の仕事をした後、沖縄に移住し、
映像・執筆関係の仕事をしていると記されている。
立花氏の秘書時代に東大で学生が行っていた、いろいろな人が20歳の頃どうしていたかをインタビューする作業をサポートをしていた経験を参考に、2004年には琉球大学でも非常勤講師として
職業と人生をテーマにした講義をされ、同じような試みの指導をされていたようだ。
そのたくましさにも敬服したい。

やはり、女はいくつになってもたくましく生きることが運命なのかもしれない。

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立花隆秘書日記

立花隆秘書日記

  • 作者: 佐々木 千賀子
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


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笑っちゃうけど泣ける「負け犬エンジニアのつぶやき-女性SE奮戦記」 扇田夏実 [仕事に悩み考えているときに]


「負け犬エンジニアのつぶやき-女性SE奮戦記」
扇田夏実著 2004年8月初版 技術評論社

この出版社は、IT系の資格試験用参考書などを購入されたことのある方には
おなじみの会社である。私もこの本を、IT系参考書コーナーで見つけた。
地味な実用書の間で、見事に浮いたこの表紙。ふと手にとると、面白さのあまり、
止まらなくなってしまった。

この著者はシステム・エンジニアとして12年余り同じ会社で身を捧げてきた。
SEという仕事も嫌いではなかったようだが、いかんせん組織の矛盾に悩まされ、愕然とし、
最後にはいつ見切りをつけようか、とタイミングを計り始める。

SEという業界に問わず、女性なら共感できることが切実に書かれているのだが、
その切実さのあまりに著者さえもバカバカしくなるのか、冗談のようにしか描きようがないのか、
読者もついおかしくて笑ってしまう。

ついでにタイムリーなイラストと「負け犬のつぶやき」というコメントがそれぞれの章に
あるものだから、さらに大笑い。(その苦労と矛盾に自分が共感しているから笑っているので、
ここで笑える人は笑っている場合ではないのだ、本当は・・・)

著者も最後に書いているように、「闘犬からの卒業」をして、「負け犬」とか勝ち組とかいう
言葉とは関係なく、あるときには自分のほうからダメな組織をスパッと切り捨てて
自由になってみることも必要なのかもしれない。

もちろん、自由には経済的・精神的不安も伴うが、組織にいて自分がダメになると気づいたら、
早いほうがいいのかもしれない。

何しろ、世界中で一番大切なのは組織でも社会的地位でもなく、まず自分自身なのだから。

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負け犬エンジニアのつぶやき~女性SE奮戦記~

負け犬エンジニアのつぶやき~女性SE奮戦記~

  • 作者: 扇田 夏実
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2004/07/06
  • メディア: 単行本


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