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ミステリーの姿を借りて家族愛を描く 「赤い指」 東野圭吾 [大切な人とのことを考えたいときに]


「赤い指」 東野圭吾 講談社 2006年

東野氏の作品には昔あることでわだかまりがあり、作品をさけていた、と
前に「容疑者Xの献身」で書いたと思う。
その呪縛からとかれて、素直な気持ちで読んでみることにした最近である。

この作品は、最初は推理ものか、サスペンスか、と思わせるのだが、実は違う。
そうしたものの形を借りた家族愛についての物語になっている。

なぜなら、犯罪にちなむ筋書き自体は、最初からある程度推理物を読んできた
読者なら「こう来るだろう」というとおり話が運ばれていくのだ。
そして、作品の半ばを過ぎたところでその事件は解明されてしてしまう。

事件自体は、幼い少女の殺人遺棄事件、という許せない切ない事態である。
本来なら、その少女の両親を初めとした身内の立場からの視点が強調される
パターンである。

しかし、作者が書きたかったのは、そこから先なのだ。
作者は犯罪を書きたかったのではなく、あくまで家族愛、家族の関係の問題、
そしてその再生をテーマにしたかったのだろう。
作者の今描こうとしているものが何なのか、ひねることなく、ストレート
読者に伝わってくる素直な展開である。

だから、ひねりや最後にドン、と落とされるのを楽しみたい向きには物足りない
かもしれない。しかし、こういう分野があってもいいと思う。

実は、物語で起きた事件とは別の、
その事件に関わった刑事自身の家族の物語もダブっている。

その最後はちょっときれいすぎるようなオチなのだが、悪くは無い。

今の世の中で、こういうきれいなオチを共感することも、
特に若い人たちには大切なのかもしれない、と私は思う。

それこそが、作者の狙いだったのではないだろうかとも感じるのだ。

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赤い指

赤い指


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見守りたい微妙な作家 「きいろいゾウ」 西加奈子 [大切な人とのことを考えたいときに]


「きいろいゾウ」 西加奈子 小学館 2006年

目次の次のページを開くと、いろいろなものを並べたリストがある。
「必要なもの。」とあり、本当にいろんなものが並んでいる。
なんだこりゃ、というものもある。

西加奈子は「さくら」以来なのだが、本当に微妙な作家だと思う。
今回は、かなり村上春樹氏のトーンがだぶった。

少々不安定な人物が多いからだろうか?
それとも、トラウマ的な体験が徐々に影を落としていくからか?
それは嫌味なほどではないし、
村上氏のものとは結果的に全く違う展開になるのだけれど。

最後のおたのしみの秘密を隠しながらも、物語は最初、
何気ない日々の暮らしから始まる。

妻である「ツマ」、夫である「ムコ」、
そしてある物語の3つの異なる流れが時間軸に沿って織り成していく物語だ。

都会から田舎に駆け落ちのようにして居を構えた「ツマ」と「ムコ」、
そして周りの自然や動物、数少ない近所の人々。

そうやってのんびりと物語りは進んでいくのだ。

・・・と思っていた。

月の満ち欠けとともに、時間は流れ、
それに押し流されるように3つの流れは複雑に影響しながらも流れ続け、
最後の最後にすべての秘密は明らかになる。
まるで満月の下に照らされるように。

登場人物で私が気に入ったのは弱冠9歳で初めての、
そしてたぶん本当の恋をする少年だ。
彼に自分の感情を移入させやすいからかも?

さて、山あり、谷ありの後、最後にまた「必要なもの。」のリストが添えられている。
最後にはそれらを見て、なるほど、と思うのだ。
確かに必要なものなのだ。

西加奈子。
これからも見守っていきたい作家である。

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きいろいゾウ

きいろいゾウ


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やはり食欲は大事 「スープ・オペラ」阿川佐和子 [大切な人とのことを考えたいときに]


スープ・オペラ」 阿川佐和子著 新潮社 2005年初版

変なタイトル、と思うのだけれど、これには二つのひっかけがある。

一つは皆さんもお分かりのとおり、「ソープオペラ」、つまりアメリカでの昼メロのことで、
石鹸会社がスポンサーにつくことからこういわれているという。
日本でも、確かに○○愛の劇場とか、○&Gがスポンサーについた
30分くらいの家庭ドラマ(時にはほのぼのではなくドロドロ系もあり)がある。

かといって、特に昼メロチックな不倫でもどろどろでも、子沢山の家族愛ものでもないのだが。
ただ、擬似家庭というか、他人でも楽しい食卓を築くことができるんだ、と
ちょっと楽しそうな場面が多く出てくる。

もうひとつは、この物語の中に、欠かせない献立として、「スープ」が出てくることがある。

と言っても、別にラーメン屋や今流行のスープカフェの話ではない。
献立によく、いや、必ずといっていいほど毎日スープが出てくるのだ。
このスープが結構な話の鍵を握っている。

主人公は35歳の大学職員の女性。最初は24歳年上の母の妹と共に住んでいる。
この伯母さんがかなりかっとんでいる。
それに気おされるように、主人公は非常に常識的におとなしく人生を静かに生きているのだが、
その伯母さんが急にわけあって家をあけることになったことをきっかけに、
思わぬ同居人達が転がってくる。

主人公の父ともいえるくらいの年齢の画家、及び編集者の男性との奇妙な同居生活が始まる。
そして、その食卓には必ずなぜかスープを出す、というルールを決めるのだ。

食べ物がいろいろと出てくる作品は楽しい。
食卓が楽しそうに描かれている、ということはその食卓にならぶメンバーがうまくいっている、
ということだ。
しかし、その楽しい食卓はいつまでも続くわけではない。
様々なことが起こる。

女35歳の主人公は、周りに振り回されつつも、結局は自分のペースを崩すことはない。
大切なものが何かを知っているし、一人で生きていくこともできるのだ。
さすが阿川女史、このあたりのツボはしっかり長編小説でも押さえている。

でも、仲間がいればもっと楽しい。
しかも、楽しく食卓を囲むことができる仲間がいれば。

物語の中で、近所の肉屋さんのハムカツ、というのが出てくる
それがどうにもこうにもおいしそうに描かれていて、そのあつあつを食べてみたくなる。
厚いのと薄いのとあるのだが、その薄いほうが主人公たちのお好みだ。
もしこの食卓に招かれたとしたら、ぜひ鶏がらからとった澄んだスープと、
この薄いほうのあつあつのハムカツにご相伴してみたいものだ。
そんないきいきとした、健康的な気持ちになる作品であった。

食欲のない方、人間関係に行き詰っている方にお勧めかもしれない。

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スープ・オペラ

スープ・オペラ

  • 作者: 阿川 佐和子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 単行本


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旅の友にお勧めします 「博士の愛した数式」小川洋子  [大切な人とのことを考えたいときに]


「博士の愛した数式」 小川洋子 2005年12月出版 新潮文庫
(新潮社2003年初版)

ずっと気になっていたが、もう少しほとぼりが冷めてから読んでみようと思っていた。

私はどうも多くの人が「いい!」という本は少し遠慮してしまう傾向がある。
どこかにも書いたかも知れないが、「窓際のトットちゃん」を読んだのも確か初版から
10年以上経ってからであった。

この本を手にする機会は、突然訪れた。
急に訳あって羽田から飛ぶことになった時、空港の小さな丸善でこの本を見かけ、
どうしても読みたくなってしまったのである。
理由は不明。
「これを逃すと、多分読まないかもしれない」と私の予感が告げた。

行きは別の本を読んでいたので、帰りの飛行機で読み始めた。
そして、家につく頃にはあと数ページ、というところに来ていた。

どんな旅であれ、旅に似合う作品だと思う。多分、移動にリズムが合うのだろう。

結果として、私の丸善での勘は当たったと思うし、読んでよかったと思う。
それは、いくつかの理由がある。

 一つは、多くの忘れかけていた数字の面白さを教えてくれたから。
(フェルマーの最終定理が証明された、というニュースを知ったときの驚きを思い出した。
その割りに数学には弱い私である)

 一つは、いろんな人がこの世の中には生きていて、それぞれの過去と生き方を
選ぶと選ばざるとに関わらず背負っているということを再認識したから。
当たり前の事だが、そのことを意識せず人と接してしまうことがある。

 一つは、どんな状況でも相手への敬意あるいは愛があれば、関係を構築することが
できるかもしれないという可能性に気が付いたから。

あまりに稚拙な理由かもしれない。しかし、それが読んでの素直な感想だ。
距離を飛ぶと、思いもかけず心が無防備になる。
それでいいのかもしれない、と私は思う。

***************************************

昨日、雪の中を避けがたい用事で出かけた私は、電車の中で
本を読みながら目を真っ赤にしている女性を見た。

そこに、本の美しい存在意義の一つがあるのかもしれない、と感じた。

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博士の愛した数式

博士の愛した数式


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大切な人といつまでも・・「二人が睦まじくいるためには」吉野弘 [大切な人とのことを考えたいときに]


「二人が睦まじくいるためには」 
2003年10月初版 童話屋 吉野 弘著

吉野氏は詩人である。
きっと、この本に収録されている「夕焼け」や「奈々子へ」、「I was born」などは、
年代によっては教科書などで既に出会ったことがある詩かもしれない。

「夕焼け」は何度も満員の電車の中で席を譲ろうとする娘の話、
「奈々子へ」は自分の子どもへ父として本当に伝えたいことを、
「I was born」では、自分が生まれてきたことに対する思いを
蜉蝣(かげろう)という虫にだぶって描かれている。

吉野氏の作品は、現実社会でやさしい気持ちを持つ人間がどんな思いをするか、
哀しく切ない言葉でつづったものが多い。

しかし、田中和雄氏により編集されたこの1冊は、本のタイトルとなった
「二人が睦まじくいるためには」の一文から始まる「祝婚歌」という作品にすべてが集約され、
人を愛するという明るい光と希望に満ちている。

この「祝婚歌」という詩は結婚する二人のために贈られたことばであるが、
結婚して何年たっていても、あるいは付き合って何年たっていても、
一緒にいようと決めた二人が心を結び合っているために大切だが忘れがちなことごとが
すべて表現されているように感じられる。

この詩に書かれている言葉は、生き方にも関わる問題であり、
ことばでは易しくても、実践するのは難しい。
それでも、私は時々本棚からこの本を取り出し、時には枕元において、
大切な人と心を沿わせながらやさしい時間を共有していくにはどうしたらいいのか、
そっと考えてみる。

もちろん、結婚する大切な知人へのプレゼントや贈ることばにしても良いだろう。

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二人が睦まじくいるためには

二人が睦まじくいるためには


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