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人間の罪を見つめる 「償い」矢口敦子 [人生や物事について考えたいときに]

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「償い」 矢口敦子 幻冬舎文庫 2003年

物語の展開と設定に独特のものがある、と思った。

筆者の経歴を見ると、小学5年生で病気のため通学をやめ、
通信制で大学まで卒業、とある。
そういうところが仁木悦子とあるいは似ているかもしれない。

外に自由に出られるから、一般的なルートを来たから、
世の中のことがよくわかっているというわけではない。
仁木氏がそうであったように、かえって部屋の中で過ごす時間が多いほど
外の世界や人の心には敏感になるのではないか。

この作品を通して感じられるのは、具体的に起こる物事の展開への興味よりも
それが関係者にとってどのような心理的意義をもっていたか、ということだ。
その描写については非常に複雑な伏線を張っている。

主人公は元、将来を嘱望された大学病院医師
そして、まだ国家試験が受かったばかりの若い頃、あるちいさな命を助ける。
その命とふたたびめぐりあったとき、彼はホームレスになっていた。

事件がやや交錯したり、刑事との関係の甘さなど、ややすっきりしない点が
残るのだが、最初に書いたように、この物語はサスペンスや犯人探しよりも
人間の罪というものを見つめた作品だといえるだろう。

主人公のホームレスの罪、多くの犯罪者とその原因となった環境の罪、
そして昔主人公が助けた初めての命をもつ少年の罪。

人間、誰しもどこかに暗い気持ちを抱えながら生きている。
それはどうしようもない出来事であったり、誰かに罠にかけられたり、
「なぜ自分だけが」と思うようなことかもしれない。

法的には問題がなくとも全く罪を犯さず、
後悔のない人生を歩んできたなどといいきれる大人は
そう多くはないだろう。

それがもう取り返しのつかない命に関わるとき、
人間はどう償えばいいのか。

答えは目の前にあるような気がする。
それを実践するのが難しいだけなのだ。

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※読みたいけれど図書館で借りたり本屋で探す時間の無い方はご利用ください。



償い (幻冬舎文庫)

償い (幻冬舎文庫)




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